ビブリアによせて

☆ 2013.01.12 SAT ☆

 

 『カラマーゾフの兄弟』のロケが鎌倉文学館で行われていたり、

 『ビブリア古書堂の事件手帖』の撮影が円覚寺さんであったりと、

 最近の 真冬の鎌倉は何かとアクティブ。

 

 ~ ビブリア ~ ってラテン語で 『本を愛する人』 という意味らしいですね。

  10年と少し前に他界した父はとにかく読書家でした。

 古い実家の茶の間の扉は、2階の本の重みで建てつけが悪くなっていたし、

 家の壁がまるで洞窟のように日曜大工で作った本棚で埋め尽くされていたし、

 駅前の本屋さんが定期的に新刊を届けに来たりもしていた。

 

 父が他界して数年後、本を引き取りに来てもらった古本屋さんに

 「おとうさんは手袋をはめて読んでいたんですか?」と聞かれたほど、

 コンディションがよかったらしい。 近所の図書館の方は台車で何回も往復してくれた。

 

 読み終わった本にはワープロ打ちをしたタイトルが、カバーをした背表紙に丁寧に貼られていたっけ。

 背表紙にタイトルのついていない本を探すのが大変なほど、殆どを読破していたけれど。

 

 その反動ってわけじゃないけれど、私は本を読みません。

 今思えば子どもにありがちな反抗だったのかなとも思うけど、

 『 本を読め 』 と言われるのがとても嫌でした。

 

 それでも短大時代は国文学科なんかにいて、

 擬古物語の 『 “ とりかへばや物語 ” における現代性 』 なんて卒論も書いたし、

 当時オープンしたての鎌倉文学館に友人たちをかなり連れていったりもした。

 30年近くの時を経て、その場所で人形劇のワークショップをやることになるなんて、

 誰もが想像すらできなかったと思うけど。

 

 文学館の展示室にあった、

 芥川龍之介が家族にあてた直筆の手紙とか、近代作家さん達の生原稿とか

 訂正訂正を重ね過ぎてもはや読めなくなっちゃってる原稿用紙とか、

 万年筆のインクのかすれ具合とか、面白かったなぁ。

 

 でも、私は本をよみません。

 

 先週がちょうど亡き父の誕生日だったせいもあり、『本』 というキーワードから

  なんとなく 「本を愛する人」だった父のいた風景を想い出し

 ちょっとした昔の記憶がちらちらと出てきたのかなぁと思いつつ。  <END>